2013年03月19日

病院で「冥土めぐり」

今日は病院の日で、内科と婦人科を受診してきました。
実は、先月の12日に予約を入れていたのですが、22日と勘違いしていて、20日になってから間違っていたことに気づいたのでした。
いつも受診日をカレンダーに書いておくのに、手帳に書いただけでその手帳を見ていなかったために起きたことでした。このようなことは初めてなので、自分自身ショックでした。

内科の方は、電話で再予約できたのですが、婦人科は予約ができませんと言われました。
以前、婦人科に予約なしで行ったら、6時間待たされたことを思い出しました。あまりにも長い間待たされたので疲れ果て、かえって具合が悪くなってしまいました。

今日は、3冊の本とペットボトルのお茶を持って出かけました。覚悟をしていたとはいえ、憂鬱でした。
ところが今日は内科が終わって婦人科に行くと、30分ほどで呼ばれました。血液検査をすることになり、検査室は患者が入りきれないほどたくさんいたので、そこで40分ほど待たされましたが、あとはスムーズで、終わったらまだお昼前だったのでびっくりしました。


待合室では図書館で予約していた本、「冥土めぐり」(鹿島田真希著、河出書房新社)をようやく借りられたので、それを読んでいました。
「冥土めぐりは」昨年の芥川賞受賞作です。作者の鹿島田真希さんがクリスチャンだと知って、読んでみたいと思ったのです。
この小説は、劇的なことが起こるというのではなく、主人公が理不尽を受容していく心の旅のような内面的小説です。

主人公の奈津子は、裕福だった過去に執着し、借金を重ねる母と弟から資産家と結婚することを望まれていました。
ところが、彼女が結婚したのは市役所の職員でした。結婚後、夫の太一は脳の病にかかり、体の自由を失ってしまいます。太一は困難を受容して今を素直に生きています。
生きる気力を失っていた奈津子は、太一と共に子どもの頃泊まったホテルに宿泊して、旅をするうちに変化していきます。

奈津子が母親や弟に縛られているのは、過去のトラウマからきているのだろうと思い、共感できました。夫の太一が突然脳の病にかかってしまうことは不幸なことなのかもしれませんが、そのことが救いとなったと気づくところが印象に残りました。

心に残った箇所を紹介します
「太一は自分の家族から受けた仕打ちについて、突然見舞われた、脳の病について、どうしてなにも語らないのだろう、と。この一連の理不尽と矛盾について、彼はどう思っているのだろう。だが、今旅の終わりに奈津子はなんとなくわかる気がする。彼はきっとなににも考えていないのだ。晴れの日は服を脱ぎ、雨の日は傘を差す。きっとその程度にしか感じていないのだ。(中略)普通の人なら考える。もうたくさん、うんざりだ。この不公平は、と。だけど太一は考えない。太一の世界の中に不公平があるのは当たり前で、太一の世界は、不公平を呑み込んでしまう。たとえそれがまずかろうが毒であろうが。」(p71〜72)

『不公平呑み込んでしまう。』という一文にはっとさせられました。
どうして自分だけがこんな苦しみを背負わなくてはならないのか、不公平だとつぶやくのではなく、不公平は当たり前のこととして受け入れる太一の姿に奈津子は救われたのだと思いました。

それにしても「冥土めぐり」というタイトルはどういう意味なのでしょう……。
わたしは、タイトルを聞いて、冥土という場所を旅する人たちのファンタジー的な小説だと思っていましたが、全く違っていました。

タイトルの意味について、作者が語っていたものがネットに掲載されていました。

冥土の概念が、天国でも地獄でもない不思議なところ。
「主人公が、心が死んでしまったような状態から、生きる生命力をもらって帰ってくる、そこが冥土を巡って帰ってきたという意味です。」


文芸春秋の選評では川上弘美氏が次のように書いておられます。

なんだかよくわからないのに、この小説はとても切実だった。その切実さは、作者が小説にこめた思いの強さ、などというものからきているのではないと思います。そうではなく、作者の書き方、技術の手柄なのです。技術という言葉は、「小手先」などという言葉と結びついて浅薄な印象をまま与えますが、書いている時の切実さを小説にこめるには、どうしても技術が必要になると思うのです。技術は、それぞれの作者が年月を積み重ねて独自に手に入れたものであり、決してマニュアル化のできないものです。

『技術は、それぞれの作者が年月を積み重ねて独自に手に入れたもの』
わたしの場合は、『年月だけは積み重ねて来たけれど、技術が伴わない』のです。
posted by 土筆文香 at 21:07| 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。